【簿記3級童話】かぐや姫、月への帰還と前受金の処理〜お代は前払いでお願いします〜
2025年5月23日 に公開
【簿記童話】
かぐや姫、月への帰還と前受金の処理〜お代は前払いでお願いします〜
むかしむかし、竹取の翁(おきな)と嫗(おうな)が住む村に、不思議な竹から生まれた美しい娘がいました。
名はかぐや姫。月の光のような輝きを持つ彼女は、あっという間に都じゅうの注目を集める存在に。
「この美しさは、ただの娘ではあるまい……!」
若き貴族たちはこぞって彼女に求婚し、プレゼント攻勢。
そしてその中に、とある“現金を積むタイプ”の貴族が現れたのです。
■ その取引、前受金です!
「姫……この“月見の壺”をぜひお譲り願いたい!代金は前払いしますので!」
そう言って渡されたのは、50,000円の前金。
商品は翌月発送という約束です。
姫は思いました。
「これは……受け取ったけど、まだ壺を渡してないから売上にはできないよね?」
そう。かぐや姫は意外と堅実な性格。ちゃんと帳簿をつけていたのです。
■ かぐや姫の仕訳帳
前金を受け取ったその日の仕訳:
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 50,000 | 前受金 | 50,000 |
まだ商品を引き渡していないから、売上ではなく「前受金(負債)」になるんですね。
そして1ヶ月後、壺を無事発送。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
前受金 | 50,000 | 売上 | 50,000 |
提供完了のタイミングで初めて「売上」に変わります。
■ 月の使者、そして決算の夜
しかし──
「かぐや姫様、月にお帰りいただきます……」
突然やってきた月の使者たち。
かぐや姫は静かに、帳簿とにらめっこ。
「まだ発送していない“月見だんごセット”が10件あるわ……全部前金で受け取ってる。これはちゃんと“前受金”として残しておかないと……」
決算直前、姫の頭の中は前受金でいっぱいでした。
■ こぐま商会にSOS!
かぐや姫は、村一番の簿記マスター「こぐま商会」に駆け込みます。
🐻こぐまさん:前受金のままでOKです。まだ“提供してない商品”に対して受け取った代金だからね
🦊フォクシー理事:提供前に売上にしてしまうと、収益の認識が前倒しになってしまう。これは会計のルール違反だ
🐧ペンリー:しかもそのまま帰還しちゃうと、未履行契約のままになっちゃいますよ姫!
かぐや姫「……それは困りますね。せめて今月発送できる分だけ売上処理して、あとはちゃんと“前受金”にしておきます!」
■ かぐや帳のポイント整理
用語 | 意味 | なぜ? |
---|---|---|
前受金 | 商品・サービス提供前に代金を受け取ったときの「負債」 | 商品を渡してない=義務が残ってる=負債 |
売上計上のタイミング | 提供したときのみ | 会計ルールで明確に決まっている |
決算時の注意 | 未発送の商品があれば「売上」ではなく「前受金」 | 誤って利益を前倒しすると粉飾になる恐れも |
■ 仕訳クイズに挑戦!
Q1. 月見まんじゅうセットの代金3,000円を前払いで受け取りました(商品はまだ渡していません)。仕訳は?
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
[ ] | 3,000 | [ ] | 3,000 |
Q2. 翌月、商品を発送しました。仕訳は?
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
[ ] | 3,000 | [ ] | 3,000 |
答えは……【エピローグ】で!
【エピローグ】
🐻こぐまさん:「いやー、かぐや姫、しっかりしてたね」
🦊フォクシー理事:「まさか月に帰る直前まで帳簿を整えるとは……」
🐧ペンリー:「月でもクラウド会計を使ってるのかもしれませんね」
🐻こぐまさん:「さて、クイズの答えいくよー」
✅ クイズ答え
Q1
借方:現金 / 貸方:前受金
Q2
借方:前受金 / 貸方:売上
まとめ
- 前受金は「先にお金をもらったけど、まだ商品を渡していないとき」に使う負債の科目
- 商品を渡した瞬間に「前受金」→「売上」へ切り替える
- 決算整理では、未提供分が残っていないかを必ずチェック!
月に帰っても帳簿はつける!
かぐや姫のように、正しいタイミングで“収益”を認識することが、信頼される経理への第一歩です🌕
こぐま商会のまじめでやさしい店主。経理はまだ勉強中。