
【こぐま商会の前払いメモ】
こぐま商会のレジ横に、3枚のメモが並んでいました。ひとつは仕入先への前金、ひとつはリスノさんへの出張前渡し、もうひとつはミーヤの会場代の立て替えです。
前払金・仮払金・立替金は、どれも「先にお金を出した」場面で出てくる資産です。ただし見分け方は違います。商品やサービスをあとで受け取るなら前払金、使い道や金額がまだ確定していないなら仮払金、他人が本来払うべきものを一時的に払ったなら立替金です。
ミーヤ:「ぜんぶ先に払ってるのに、名前が3つもあるの?」
こぐまさん:「ここは、誰のために払ったのかと、内容が決まっているかを分けて見たいね。」
ペンリー:「判断軸は3つ。受け取る予定、内容の未確定、他人のための支払いだ。」
この記事では、簿記3級で迷いやすい前払金・仮払金・立替金の違いを、こぐま商会の取引で整理します。
【こぐまTips:3秒で見分ける】
前払金・仮払金・立替金で迷ったら、最初に「何を待っているお金か」を見ます。
- 商品やサービスをあとで受け取るのを待っている → 前払金
- 領収書や精算で、使い道が確定するのを待っている → 仮払金
- 相手から返してもらうのを待っている → 立替金
こぐまさん:「待っているものが違う、と考えると整理しやすいね。」
ペンリー:「そう。名前より先に、お金を出した理由を見る。」
【こぐまTips:まずは違いをひと目で整理】
ミーヤ:「名前が似ていて分かりにくいから、表で見たい!」
ペンリー:「判断する順番を比べると整理しやすい。」
| 観点 | 前払金 | 仮払金 | 立替金 |
|---|---|---|---|
| 何のお金か | 商品やサービスを受け取る前に払ったお金 | あとで精算するために一時的に渡したお金 | 他人が払うべきものを代わりに払ったお金 |
| 内容は確定しているか | 確定している | まだ未確定 | 確定している |
| 誰のための支払いか | 自社のため | 自社の用事だが詳細はあとで確定 | 他人や取引先のため |
| あとの処理 | 商品到着やサービス提供時に仕入などへ振り替える | 領収書などで実際の費用へ振り替える | 相手から返してもらう |
| 代表仕訳 | 前払金 / 現金 | 仮払金 / 現金 | 立替金 / 現金 |
3つとも資産に分類されます。理由は、現金は出ていっていても、あとで商品を受け取る権利、精算される権利、返してもらう権利が残っているからです。
関連する基本論点は、前払金とは、仮払金とは、立替金とはでも確認できます。
前払金は「あとで受け取るもの」が決まっている
前払金は、商品やサービスを受け取る前に、代金の一部または全部を先に払ったときに使います。ポイントは、支払った目的と相手がすでに決まっていることです。
例1: 商品の前金を支払った
こぐま商会は、販売用の焼き菓子を仕入れるため、商品が届く前に前金 18,000円を普通預金から振り込みました。
こぐまさん:「商品はまだ届いていないから、仕入にはしないんだね。」
ペンリー:「そう。まだ受け取っていないので、前払金として資産に置く。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払金 | 18,000 | 普通預金 | 18,000 |
この時点では商品を受け取っていないため、仕入ではなく前払金です。
商品が届いたら、前払金を仕入に振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 18,000 | 前払金 | 18,000 |
仮払金は「あとで内容が決まる」
仮払金は、出張や買い物の前に、従業員などへ概算でお金を渡したときに使います。支払った時点では、何にいくら使うかがまだ確定していないのが特徴です。
例2: 出張前に概算額を渡した
リスノさんが仕入先を訪問するため、こぐま商会は出張前に現金 12,000円を渡しました。
ミーヤ:「交通費か、宿泊費か、おみやげ代か、まだ分からないってこと?」
こぐまさん:「おみやげ代は経費にしないとして、内容がまだ決まっていないのは同じだね。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仮払金 | 12,000 | 現金 | 12,000 |
後日、旅費交通費 9,500円に使い、残額 2,500円を現金で返してもらった場合は、仮払金を実際の内容に振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 9,500 | 仮払金 | 12,000 |
| 現金 | 2,500 |
仮払金は、ずっと残す勘定ではありません。精算で内容が分かったら、実際の費用や資産に置き換えます。
立替金は「他人のために払ったお金」
立替金は、会社が本来負担するものではなく、他人や取引先が払うべきお金を一時的に払ったときに使います。あとで相手から返してもらうため、資産として記録します。
例3: 会場代を一時的に立て替えた
ミーヤが使うイベント会場代 7,000円を、こぐま商会が現金で一時的に支払いました。会場代はこぐま商会の費用ではなく、ミーヤから後日返してもらう約束です。
ミーヤ:「これは、こぐま商会のイベントじゃないもんね。」
ペンリー:「だから費用にはしない。返してもらうお金として立替金にする。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 立替金 | 7,000 | 現金 | 7,000 |
後日、ミーヤから現金で返してもらったら、立替金を消します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 7,000 | 立替金 | 7,000 |
立替金の判断では、「自社の費用かどうか」を先に見ます。自社の費用でなければ、費用科目にせず、返してもらう相手を意識します。
前払費用と前払金も混同しやすい
前払金と似た言葉に前払費用があります。どちらも先に払う点は同じですが、前払費用は家賃や保険料のように、一定期間にわたってサービスを受ける費用のうち、まだ当期の費用にしない部分です。
| 観点 | 前払金 | 前払費用 |
|---|---|---|
| よく出る場面 | 商品やサービスの代金を先払い | 家賃、保険料、利息などの期間対応 |
| 判断の中心 | まだ受け取っていない商品やサービス | まだ当期に対応していない費用 |
| 代表仕訳 | 前払金 / 現金 | 前払費用 / 保険料 |
こぐまさん:「前払金は取引の前金、前払費用は期間のズレを直す感じだね。」
ペンリー:「その分け方でいい。」
前払費用を詳しく確認したい場合は、前払費用の記事も見てください。
よくある間違い
前払金・仮払金・立替金は、どれも借方に出る資産なので、問題文を急いで読むと混同しやすいです。特に次の4つは、簿記3級の仕訳問題でつまずきやすいところです。
商品の前金をすぐ仕入にしてしまう
商品をまだ受け取っていないなら、仕入ではなく前払金です。仕入にするのは、商品を受け取ってからです。
| 間違い | なぜ違うか |
|---|---|
| 仕入 / 現金 | 商品をまだ受け取っていないため、費用にするのが早い |
| 前払金 / 現金 | 受け取る権利として資産にする |
出張前渡しを前払金にしてしまう
出張前に従業員へ概算額を渡す場合、何にいくら使うかがまだ確定していません。この場合は前払金ではなく仮払金です。
ミーヤ:「前もって払ったから前払金、とは限らないんだね。」
ペンリー:「前払金は、受け取るものが決まっているときだ。」
他人の支払いを自社の費用にしてしまう
取引先や知人が負担すべきお金を一時的に払っただけなら、自社の費用ではありません。あとで返してもらう立替金として処理します。
| 場面 | 使う科目 |
|---|---|
| 自社のイベント会場代を払った | 支払手数料、雑費など内容に合う費用 |
| 他人のイベント会場代を一時的に払った | 立替金 |
前払金と前払費用を名前だけで決めてしまう
前払金は「取引の前金」、前払費用は「期間のズレを直す科目」です。名前は似ていますが、見ているポイントが違います。
仕訳クイズ
ミーヤ:「3つの見分け方、そろそろ試してみたい!」
ペンリー:「では、名前を先に決めずに、支払いの中身から考えよう。」
Q1. こぐま商会は、来月納品される販売用商品の前金として、仕入先に現金 20,000円を支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払金 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
商品をまだ受け取っていないため、仕入ではなく前払金です。
Q2. こぐま商会は、出張前のリスノさんに、使途未確定の現金 15,000円を渡した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仮払金 | 15,000 | 現金 | 15,000 |
何にいくら使うかがまだ分からないため、仮払金です。
Q3. 取引先が負担すべき配送料 4,000円を、こぐま商会が一時的に現金で支払った。後日、取引先から同額を受け取る予定である。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 立替金 | 4,000 | 現金 | 4,000 |
自社の費用ではなく、取引先から返してもらうお金なので立替金です。
【エピローグ】
3枚のメモは、前払金・仮払金・立替金の箱に分けられました。こぐまさんは、帳簿の横に小さく「誰のため、内容確定、あとで何が起きる」と書き添えました。
こぐまさん:「先に払った、だけで決めないことが大事なんだね。」
ミーヤ:「商品を待ってる、精算を待ってる、返金を待ってる。待ってるものが違うんだ!」
ペンリー:「その整理なら、問題文の読み違いも減る。」
関連する勘定科目をまとめて確認したい場合は、勘定科目一覧から資産の科目を横断して見られます。
まとめ
こぐまさん:「今日のポイントは、支払いの先に何が残っているかを見ることだね。」
- 前払金は、商品やサービスをあとで受け取るために先に払ったお金
- 仮払金は、使い道や金額がまだ確定していない一時的な前渡し金
- 立替金は、他人が払うべきものを代わりに払い、あとで返してもらうお金
- 迷ったら「内容は決まっているか」「誰のための支払いか」「あとで何が起きるか」を確認する

こぐま商会のまじめでやさしい店主。経理はまだ勉強中。







