
【簿記3級】決算整理後残高試算表に当期純利益を書かないのに貸借が一致する理由
2026年5月16日 に公開

当期純利益は試算表に足す数字ではない
決算整理を終えたこぐま商会。こぐまさんは、決算整理後残高試算表を見ながら手を止めました。
決算整理後残高試算表には、売上や仕入、現金や買掛金などの勘定残高を並べます。ここで当期純利益を直接1行足さなくても貸借が一致するのは、試算表がすべての勘定残高を借方・貸方のルールどおりに集めた表だからです。当期純利益は、試算表に足す独立した勘定ではなく、収益と費用の差額としてあとで計算されます。
こぐまさん:「当期純利益を書いていないのに、どうして借方合計と貸方合計が合うんだろう?」
ミーヤ:「利益が出てるなら、どこかに足さないと貸方が足りない気がする!」
セルヴィア:「当期純利益は、残高試算表に新しく足す札ではありません。収益と費用を比べると、そこに見えてくる差額ですね。」
この記事では、簿記3級で迷いやすい「決算整理後残高試算表」と「当期純利益」の関係を、こぐま商会の小さな数字で確認します。
【こぐまTips:試算表と当期純利益の役割】
セルヴィア:「まず、試算表は勘定の残高を集める表だと見ておきましょう。」
こぐまさん:「利益そのものを置く表ではなく、利益を計算する材料を並べる表なんだね。」
| 観点 | 決算整理後残高試算表 | 当期純利益 |
|---|---|---|
| 役割 | 決算整理後の各勘定残高を並べる | 収益と費用の差額として計算する |
| 表示されるもの | 資産、負債、純資産、収益、費用の残高 | 損益計算書や精算表の差額 |
| 貸借一致の理由 | 借方記入と貸方記入が同額で積み上がるため | 試算表の合計一致を作るために足すものではない |
仕訳は必ず借方と貸方が同じ金額になります。その結果、すべての勘定残高を集めた試算表も、基本的に借方合計と貸方合計が一致します。
当期純利益は、試算表の貸借を合わせるために書き足す数字ではなく、収益合計から費用合計を引いて求める差額です。
こぐま商会の小さな残高試算表で見る
例題1:収益と費用が残っていても試算表は一致する
決算整理後、こぐま商会には次の残高がありました。
ミーヤ:「売上が貸方で、仕入や家賃が借方。ここに利益って入れなくていいの?」
セルヴィア:「入れなくて大丈夫です。まずは残っている勘定を、そのままの側へ並べてみましょう。」
| 借方残高 | 金額 | 貸方残高 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 180,000 | 買掛金 | 60,000 |
| 売掛金 | 90,000 | 資本金 | 150,000 |
| 仕入 | 120,000 | 売上 | 240,000 |
| 支払家賃 | 30,000 | ||
| 合計 | 420,000 | 合計 | 450,000 |
この表は、まだ数字が足りていません。理由は、こぐま商会の例を小さく見せるために、資産や純資産の一部を省略しているからです。
試算表そのものを作るときは、すべての勘定残高を拾います。たとえば備品30,000円が借方にあれば、合計は次のように一致します。
| 借方残高 | 金額 | 貸方残高 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 180,000 | 買掛金 | 60,000 |
| 売掛金 | 90,000 | 資本金 | 150,000 |
| 備品 | 30,000 | 売上 | 240,000 |
| 仕入 | 120,000 | ||
| 支払家賃 | 30,000 | ||
| 合計 | 450,000 | 合計 | 450,000 |
ここには当期純利益という行はありません。それでも、借方合計と貸方合計は一致しています。
こぐまさん:「利益を足したから合ったんじゃなくて、全部の勘定残高を拾ったから合ったんだね。」
例題2:当期純利益は収益と費用から計算する
同じ残高試算表から、当期純利益を求めます。
こぐまさん:「じゃあ利益はどこで見るの?」
セルヴィア:「損益計算書の側で、収益と費用を比べます。ここで差額が見えてきますね。」
| 区分 | 勘定 | 金額 |
|---|---|---|
| 収益 | 売上 | 240,000 |
| 費用 | 仕入 | 120,000 |
| 費用 | 支払家賃 | 30,000 |
当期純利益は、収益240,000円から費用150,000円を引いた90,000円です。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 収益合計 | 240,000 |
| 費用合計 | 150,000 |
| 当期純利益 | 90,000 |
当期純利益は、決算整理後残高試算表の中に直接出てこなくても、売上や費用の残高から計算できます。
ミーヤ:「試算表には材料があって、利益はそこから作るんだ!」
「当期純利益を書かないから一致しない」はどこでずれる?
精算表や財務諸表の問題では、当期純利益を使って損益計算書と貸借対照表の差額を合わせます。ここが、決算整理後残高試算表と混ざりやすいところです。
| 表 | 当期純利益の扱い |
|---|---|
| 決算整理後残高試算表 | 直接は書かない。各勘定残高を並べる |
| 損益計算書 | 収益と費用の差額として表示する |
| 貸借対照表 | 純資産の増加としてつながる |
| 精算表 | 損益計算書欄と貸借対照表欄の差額を合わせるために使う |
セルヴィア:「試算表、損益計算書、貸借対照表で、当期純利益の出方が少し違います。」
こぐまさん:「だから、どの表を作っているのかを先に見るんだね。」
決算整理後残高試算表は、損益計算書と貸借対照表を作る前の材料表です。利益を表示する完成表ではないため、当期純利益を1行足す必要はありません。
第3問全体の流れを見たいときは、第3問の解き方の記事や財務諸表の全体まとめもあわせて確認すると整理しやすくなります。
ここで迷いやすいポイント
当期純利益を試算表に足してしまう
当期純利益は、売上や仕入のような通常の残高として試算表に足すものではありません。足してしまうと、同じ利益を二重に見てしまいます。
精算表の差額処理と混同する
精算表では、損益計算書欄と貸借対照表欄の差額として当期純利益を書きます。これは完成表へつなげるための表示であり、決算整理後残高試算表そのものに当期純利益を足すという意味ではありません。
貸借一致を「利益で調整する」と考えてしまう
試算表の貸借一致は、仕訳の借方・貸方が同額で記録されることから生まれます。利益は調整弁ではありません。
ミーヤ:「利益で帳尻合わせするんじゃないんだね。」
セルヴィア:「ええ。帳尻ではなく、勘定の積み重ねが整っているかを見る表ですね。」
仕訳クイズ
こぐまさん:「試算表には利益を書かず、収益と費用から計算する。ここを試してみよう。」
ミーヤ:「材料から利益を出す練習だね!」
Q. 決算整理後残高試算表に、売上300,000円、仕入170,000円、支払家賃40,000円、通信費10,000円がある。当期純利益はいくら?
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 収益合計 | 300,000 |
| 費用合計 | 220,000 |
| 当期純利益 | 80,000 |
当期純利益は、売上300,000円から費用合計220,000円を引いて求めます。決算整理後残高試算表へ当期純利益を直接足す必要はありません。
エピローグ
こぐまさんは、残高試算表の横に「利益は差額、試算表は残高」と書きました。
こぐまさん:「当期純利益を書かないのに一致するんじゃなくて、試算表は残高を全部集めるから一致するんだね。」
ミーヤ:「利益はあとから収益と費用で計算する!」
セルヴィア:「その整理で大丈夫です。表ごとの役割が見えると、決算の数字も静かにつながりますね。」
まとめ
こぐまさん:「今日のポイントは、試算表と利益計算を分けて見ることだね。」
- 決算整理後残高試算表には、各勘定の残高を借方・貸方に並べる
- 当期純利益は、収益合計から費用合計を引いて求める差額
- 精算表や財務諸表での当期純利益の表示と、残高試算表の役割を混同しない

こぐま商会のまじめでやさしい店主。経理はまだ勉強中。
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