
【簿記2級】売買目的有価証券とその他有価証券の違いは?期末評価の仕訳で確認

売買目的有価証券は、短期の価格変動による利益を得る目的で持つ株式や債券です。その他有価証券は、売買目的・満期保有目的の債券・子会社株式・関連会社株式のいずれにも該当しない有価証券です。同じ時価の変動でも、保有区分によって評価差額の行き先が変わります。
同じ株式なのに、なぜ仕訳が違うの?
こぐま商会の決算準備の日。こぐまさんは、保有している株式の資料を二つのファイルに分けました。
こぐまさん:「どちらも値上がりしているのに、片方は評価益、もう片方は評価差額金になるんだね。」
ペンリー:「同じ株式でも、持っている目的が違うんだ。問題文では、どんな目的になっているかな?」
こぐまさん:「売買して利益を得る目的なのか、別の目的なのかで分けるんだね。」
ペンリー:「うん、まずは問題文の保有目的や指定された区分を確かめると、仕訳を考えやすいね。」
以下では、市場価格のある株式を扱います。その他有価証券には全部純資産直入法を適用し、税効果を考慮する場面では実効税率30%とします。減損は不要、当期に取得して初めて期末評価するため、整理前の評価差額金と繰延税金資産・負債の残高はゼロです。
【こぐまTips:二つの区分を比較しよう】
| 比べる点 | 売買目的有価証券 | その他有価証券 |
|---|---|---|
| 区分の考え方 | 短期の価格変動による利益が目的 | 売買目的・満期保有目的・子会社株式・関連会社株式以外 |
| この例の期末評価 | 時価に評価替えする | 時価に評価替えする |
| 評価差額の行き先 | 有価証券評価損益として当期の損益へ | 税効果を調整し、その他有価証券評価差額金として純資産へ |
| 最初に読む条件 | 保有目的と整理前の帳簿価額 | 保有区分、評価方法、税効果、整理前残高 |
こぐまさん:「売買目的ではない株式は、全部その他有価証券にしていい?」
ペンリー:「そこはもう少し見てみよう。子会社株式や関連会社株式という区分もあるんだ。」
区分と評価の基本は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第15・17・18項で確認できます。ここからは、例題の区分が指定されているものとして仕訳を比べます。
例1:売買目的の株式が10,000円値上がりしたら
売買目的有価証券の取得原価・整理前帳簿価額は100,000円、期末時価は110,000円でした。この例では税効果は考えません。
こぐまさん:「時価まで増やす金額は、110,000円−100,000円で10,000円だね。」
ペンリー:「そう、その10,000円を有価証券評価益にするんだ。売買目的なら、当期の利益に入るよ。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売買目的有価証券 | 10,000 | 有価証券評価益 | 10,000 |
資産の帳簿価額を100,000円から110,000円へ増やし、10,000円を当期の利益に反映します。問題で「有価証券評価損益」の科目が指定されている場合は、その指示に従います。
こぐまさん:「現金を受け取ったわけではないから、現金の増加にはしないんだね。」
例2:その他有価証券なら、同じ10,000円をどう分ける?
別の株式です。その他有価証券の取得原価・整理前帳簿価額が100,000円、期末時価が110,000円でした。全部純資産直入法を適用し、実効税率30%で税効果を考慮します。
こぐまさん:「資産を10,000円増やすところは同じだけれど、貸方が変わるんだね。」
ペンリー:「そうだね。10,000円を、税効果分3,000円と差額金7,000円に分けてみよう。」
| 計算するもの | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 評価差額 | 110,000−100,000 | 10,000円 |
| 税効果分 | 10,000×30% | 3,000円 |
| 純資産に計上する差額金 | 10,000−3,000 | 7,000円 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他有価証券 | 10,000 | 繰延税金負債 | 3,000 |
| その他有価証券評価差額金 | 7,000 |
評価で増えた資産10,000円に対し、税効果分3,000円を繰延税金負債、残り7,000円を純資産のその他有価証券評価差額金に計上します。繰延税金負債は、ここで現金3,000円を支払うという意味ではありません。
こぐまさん:「10,000円を全部評価益にするのでも、全部差額金にするのでもないんだね。」
この例のその他有価証券評価差額金は、当期の利益ではなく純資産の項目です。「値上がり=必ず当期の利益」と決めつけず、区分と条件を確認しましょう。
仕訳クイズ:その他有価証券が値下がりしたら?
ペンリー:「じゃあ、値下がりしたらどうなるか、別の銘柄で試してみよう。」
こぐまさん:「今度は資産を減らすから、有価証券を貸方に置くんだね。」
その他有価証券の取得原価・整理前帳簿価額は100,000円、期末時価は90,000円です。全部純資産直入法・実効税率30%を適用し、繰延税金資産は全額計上できるものとします。整理前の関連残高はゼロで、減損は不要です。
解答と考え方
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 3,000 | その他有価証券 | 10,000 |
| その他有価証券評価差額金 | 7,000 |
評価差額10,000円の30%が繰延税金資産3,000円、残り7,000円が純資産を減らす評価差額金です。全部純資産直入法という条件なので、有価証券評価損にはしていません。
税効果の意味から確認したいときは、税効果会計の基本解説へ進めます。
株価より先に、問題の条件を読もう
こぐまさん:「区分、整理前の帳簿価額、時価、税効果の順に確認すれば、仕訳を組み立てやすいね。」
ペンリー:「前年の評価や期首の振戻しがあるときは、整理前の残高も忘れずに見ておこう。」
こぐまさん:「同じ値上がりでも、どこへ記録するかが違う理由が分かったよ。」
- 売買目的かどうかは、短期の価格変動で利益を得る目的から判断する。
- その他有価証券は、ほかの保有区分に当たらないかも確認する。
- その他有価証券の全部純資産直入法では、税効果を調整した評価差額を純資産へ計上する。
取得時の手数料や別の保有区分も練習するなら、有価証券の取得・期末評価の解説と問題へ。カードから選んで練習したいときは、2級の仕訳トレーニングで有価証券のテーマを選べます。

こぐま商会のまじめでやさしい店主。経理はまだ勉強中。
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